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資料データベース
実論文・研究資料の要約を、原題・著者・出典とともに掲載しています。各ページでは研究の方法、結果、日本へ当てはめる際の注意点を確認できます。
58RESOURCES / 収録数
001
論文労働供給
雇用効果 — 保証所得が労働に与える影響
Eva Vivalt, Elizabeth Rhodes, Alexander W. Bartik, David E. Broockman, Patrick Krause, Sarah Miller
資力調査つきの給付は就労インセンティブを歪めるため、無条件給付への関心が高まった。しかし無条件であっても、所得効果を通じて労働供給が減る可能性がある。一方で、流動性制約が緩めば起業や人的資本投資、より時間をかけた職探しによる良質なマッチングにつながる可能性もある。従来研究は宝くじ当選者を対象としたものが中心で、標本が小さいか、米国とは大きく異なる政策環境のものが多かった。
002
論文健康・幸福度
健康効果 — 所得は健康を改善するか
Sarah Miller, Elizabeth Rhodes, Alexander W. Bartik, David E. Broockman, Patrick K. Krause, Eva Vivalt
所得と健康の相関は社会科学で最も強固に確認された関連の一つで、40歳到達者で比べると所得上位の男性は下位より15年近く長生きするとされる。この相関を因果と見なし、医療そのものではなく所得という「健康の社会的決定要因」に介入すべきだという主張が政策側で強まっていた。ただし米国の既存研究は実験・準実験ともに結果がまちまちで、因果関係は確立されていなかった。
003
論文消費・家計
消費と家計バランスシート
Alexander W. Bartik, Elizabeth Rhodes, David E. Broockman, Patrick K. Krause, Sarah Miller, Eva Vivalt
無条件現金給付は現物給付や条件つき給付と使われ方が異なりうるが、高所得国での証拠が乏しかった。従来研究は税還付や景気刺激給付など小額ショックが中心で、額が小さいため転居のような「消費コミットメントの変更」を伴う使い道は起こりにくく、家計の意思決定について分かることに限界があった。宝くじ研究は額こそ大きいが、消費を直接観測せず資産収益から推計するものが多く、また宝くじを買う層の選択バイアスもある。
004
論文子育て・子ども
子育てと子ども
Patrick K. Krause, Elizabeth Rhodes, Sarah Miller, Alexander W. Bartik, David E. Broockman, Eva Vivalt
所得格差が子どもの健康・教育の格差に転化し、成人期への移行を通じて持続するという研究の蓄積がある。その一因として、低所得家庭が時間・金銭・現物の投資を高所得家庭と同水準で行えないことが指摘されてきた。米国の連邦・州の貧困対策の多くはこの論理に基づいている。現金給付がこの経路を断てるかが問われている。
005
論文政治・社会
政治的態度と行動
David E. Broockman, Elizabeth Rhodes, Alexander W. Bartik, Karina Dotson, Sarah Miller, Patrick K. Krause, Eva Vivalt
所得や経済的安定が政治参加や再分配選好を変えるかは長年の論点だが、観察研究では因果の識別が難しかった。所得が上がれば再分配への支持が下がるのか、それとも経済的余裕が政治参加の資源になるのか、理論的にも方向が定まっていない。
006
論文AI・経済
第二の大分岐 — 汎用人工知能が経済に与える影響
井上智洋(駒澤大学経済学部)
AIの経済影響論が活発化するなか、特化型AIと汎用AIを区別せずに議論されている状況を整理する必要があった。特化型AIは一つの課題しかこなせないが、汎用AIは人間のようにあらゆる課題をこなし得る。全脳アーキテクチャ・イニシアティブが2030年には研究開発のめどが立つとの展望を示しており、本稿はその出現時期を仮に2030年と置いて議論を進める。汎用AIが本当に実現するかどうかの議論は割愛されている。
007
論文AI・経済
汎用人工知能は経済をどう変えるか?
井上智洋(駒澤大学経済学部)
2017年論文の続編にあたる。2023〜2024年に行われた著名なAI研究者・AI企業CEOへのインタビューでは、AGI実現時期の予測は平均して2030年頃だったが、現在ではさらに前倒しになり、3年以内・2025年以内といった予測すらなされている。それにもかかわらず、大量失業に対応するセーフティネットの構築も、爆発的な潜在供給量の増大に対応する需要側政策の準備も整っていない。
008
論文政治・社会
ユニバーサル・ベーシックインカムの政治理論
Juliana Uhuru Bidadanure(スタンフォード大学哲学部)
UBIはケニア、フィンランド、ナミビア、インド、カナダなど、性格の異なる国々で実験されてきた。米国では20世紀後半にキング牧師やフリードマンを通じて議論されたが、その後数十年は下火だった。
009
論文途上国の給付
ユニバーサル・ベーシックインカム — ケニアの長期実験からの短期結果
Abhijit Banerjee (MIT), Michael Faye (GiveDirectly), Alan Krueger (Princeton, 2019年逝去), Paul Niehaus (UCSD), Tavneet Suri (MIT Sloan)
UBIの経済的な根拠の一つは、対象を絞る(ターゲティング)ことのコストである。受給者として特定される過程は、申請の行列などの時間的コストと、尊厳の喪失といった心理的コストを課す。これらは申請者を——最も困窮した層を含めて——遠ざけ、選別の誤りと相まって、社会が最も助けたい相手を排除してしまう。
010
論文労働供給
福祉の罠を取り除く — フィンランド基礎所得実験における雇用反応
Jouko Verho(VATT経済研究所), Kari Hämäläinen(VATT), Ohto Kanninen(労働経済研究所)
UBIは職の二極化や格差といった現代の労働市場の問題を緩和するのではないか、という期待が広く語られてきた。もう一つの定番の論拠は、現行の社会保障が福祉の罠(welfare trap)を生み、過度に複雑で非効率だというもの。推進派によれば、BIは働く努力に報いる簡素な制度で保証所得を提供することで、これらに対処できる。
