研究の背景
所得や経済的安定が政治参加や再分配選好を変えるかは長年の論点だが、観察研究では因果の識別が難しかった。所得が上がれば再分配への支持が下がるのか、それとも経済的余裕が政治参加の資源になるのか、理論的にも方向が定まっていない。
方法と対象
実験設計はORUS共通(イリノイ・テキサス2州、21〜40歳、世帯所得が連邦貧困線300%以下の3,000人。1,000人に月1,000ドル、2,000人に月50ドルを3年間)。政治的態度、政策選好、投票行動などをフィールド実験として測定。
結果
- 現金給付が政治的態度と行動に与えた影響は限定的
- 政治参加に効果なし
- 政策選好にも効果なし
- 例外として、受給者は労働を個人・社会にとって重要なもの、あるいは政府プログラム利用の要件として、より重視するようになったという証拠がある
日本に当てはめるときの注意
米国の二大政党対立構造と投票制度を前提にした測定であり、日本の政治参加指標にはそのまま置き換えられない。
そのほか:
- 「BIは人々を再分配志向にする/しない」という議論は日米で政党配置が異なるため、選好の方向性の解釈が変わる
- 「受給者ほど労働を重視するようになった」という結果は、Bidadanure論文が紹介する「BIは労働の価値を軽んじる」という完全主義的批判への反証材料になりうる。ただし要旨レベルの情報なので、本文で測定項目を確認してから使うべき
