1. 提言の目的
政府は、通常円と並存する半減期付きの「生活基盤通貨 LBC(Life Base Currency)」を、生存権のための一身専属の給付として法制化し、実測に基づいて段階導入すべきである。目指すのは、所得や就労の有無によらず、国内で必要な財・サービスへ到達できる生活の基盤を個人に保障することである。
設計の中心は、生存権が目的、LBC直接発行が名目的財源、有用な循環が持続機構、国内供給能力・物価・輸入に必要な円負担が実質制約という四点である。発行だけで食料、住居、医療、人手が増えるわけではない。受け取ったLBCを実際に使える経路と、財・サービスの供給を同時に整える。
日本国憲法第25条は生存権を定める。本提言はその具体化を目指す政策上の選択であり、同条からLBCの仕組みが一意に導かれるという主張ではない。日本国憲法・衆議院掲載本文
2. 経済環境と改革の目標
財政・対外収支と生活保障
円建て国債を発行できることと、金利負担や市場の信認を保ちながら運用できることは別の問題である。財務省は2026年度末の普通国債残高を1,145兆円と見込む。これは予算に基づく見込みで、翌年度借換えのための前倒債限度額を除くと約1,095兆円となる。既存債務の規模と金利の変化を、生活保障の円予算と併せて評価する必要がある。財務省「財政に関する資料」
| 2026年度の予算・発行計画 | 金額 | 読み方 |
|---|---|---|
| 一般会計歳出総額 | 約122.3兆円 | 税収と公債金等で賄う年間の円予算 |
| 租税及び印紙収入 | 約83.7兆円 | その他収入約9.0兆円と区別する |
| 一般会計の公債金 | 約29.6兆円 | 建設公債・特例公債による歳入 |
| 国債費 | 約31.3兆円 | 債務償還費約18.2兆円と利払費等約13.1兆円 |
| 国債発行総額 | 約180.7兆円 | 借換債約135.8兆円等を含み、一般会計の新規公債金と同じではない |
出典:財務省「令和8年度一般会計歳出・歳入の構成」、財務省「債務管理リポート2026」。いずれも実績ではなく、当該予算・計画に示された値である。
対外支払いでは、食料・エネルギー・原材料に加え、デジタルサービスへの継続的な支払いも考える。経済産業省のデジタル経済レポートは、2024年のデジタル関連収支を6.85兆円の赤字と推計している。LBCで国内需要を支えても、海外クラウドやソフトウェア等の代金は円・外貨で必要になる。経済産業省「デジタル経済レポート」
財務省の2024年国際収支速報では、第一次所得収支は約40.2兆円の黒字である。ただし、海外で得た利益と国内への資金還流は同じではない。財務総合政策研究所の研究会報告は、再投資収益や業種による還流の違いを分析している。これらの数字だけから為替の方向や特定制度の影響を断定せず、国内投資先と円建て取引の魅力を高める施策につなげる。財務省「令和6年中 国際収支状況(速報)の概要」、財務総合政策研究所・研究会報告「第一次所得収支は還流しているのか?」
本提言は、生活保障のためのLBC発行を円の借入れから分離する。しかし、円安、国債費、対外収支の問題がそれだけで解決するとは考えない。既存の円債務、社会保障、輸入、制度運営の財源は、円側の政策として引き続き確保する。
改革によって実現したいこと
- 世帯主への一括給付ではなく、所得・就労・家族構成によらない個人の生活基盤を保障する。
- 国内で必要な財・サービスへの需要を支え、不況時にも生活を継続できる条件を整える。
- 生存権のための給付の名目的財源を、円建て国債による調達から分離する。
- 食料、住居、医療、教育、交通、エネルギーへの到達を、実質購買力と円負担で評価する。
- 災害、感染症、失業急増に対応できる公共の給付・決済基盤を整える。
- 学び直し、起業、基礎研究、芸術、地域活動、無償ケアを選べる余地を広げる。
就労時間だけでなく、健康、生活の安定、ケア負担、選択の自由も政策評価の対象とする。これらは政策目標であり、LBCを配れば自動的に達成される効果ではない。
3. 政府から個人への直接発行
LBCは国が資格を持つ個人の専用ウォレットへ毎月直接発行する。同じ月は一人当たり同額とし、同月・同一人への二重発行を防ぐ。対象は日本国籍者とし、国内居住者だけに限定しない。海外在住者も対象だが、LBCの使途は国内に限る。
所得調査や就労要件を給付の条件にしない。既存の年金、医療、介護、障害福祉、生活保護等をLBCで置き換える構想ではなく、給付の上乗せを基本とする。既存制度の収入認定から分離する原則を置く一方、社会保険や各種給付との具体的な接続規則は法制化の課題として残る。
国は発行記帳を行うが、LBCを受領・保有・通常支出する主体にはならない。政府がLBCで公共調達や公務員給与を支払う経路、減価分を政府収入にして再支出する経路は設けない。LBC給付と円側の税・国債・社会保障の会計を分ける。
銀行、貸金業者、カード会社、ファイナンスリース事業者はLBCを受領・保有しない。認証や決済経路の提供には関与できるが、LBCの預金、貸出、利子、信用創造を行わない。給付と適格な支払いは専用ウォレット間で処理する。
通常円との役割分担
| 項目 | 通常円 | 生活基盤通貨 LBC |
|---|---|---|
| 主な用途 | 貯蓄、対外決済、金融取引、納税、既存債務、政府支出 | 個人の生活と国内の実体事業への適格な支払い |
| 時間による変化 | LBCのような制度上の時間減価を設けない。実質価値は物価等で変わる | 個人は半減期1年、事業は一律の事業減価率を適用 |
| 発行・供給 | 日本銀行券・銀行預金等の既存制度 | 国が資格を持つ個人へ毎月直接発行 |
| 政府・金融機関 | 円で収入・支出、預金・融資等を行う | LBCを受領・保有せず、発行記帳・認証等の役割を区別 |
| 換金と契約 | 円建て契約を維持する | 円・外貨・金融資産へ交換せず、既存の円契約を置き換えない |
通常円の現金・預金をLBCへ強制転換せず、預金封鎖も行わない。既発国債の元利払いは契約どおり円で履行し、LBCへの転換や債務削減を導入財源にしない。円の市場価格や実質購買力まで保証できるという意味ではない。
未成年者にも本人単位の給付と残高を設け、親や支援者の残高へ一括移転しない。代理消費では本人のための支払いだけを認め、代理権の範囲と利用履歴を管理する。
4. 国内生活と実体事業で使う
| 利用の領域 | 設計上の扱い |
|---|---|
| 食料、日用品、家賃、医療・介護、教育、国内交通、文化等 | 適格な国内の財・サービスへの直接支払いに使う |
| 国内仕入れ、設備等の実物事業支出 | 事業活動として認める。金融資産への投資とは区別する |
| 賃金、役務対価、事業主貸 | 定められた経路で個人区画へ移転する |
| 家族・成年後見等による代理消費 | 本人のための利用として別管理する |
| 通常円、外貨、暗号資産、株式、投資信託、貯蓄性商品 | 交換・取得を認めない |
| 住宅ローン、カード・貸付等の金融債務、LBC建て与信 | 支払い・生成を認めない |
| 海外送金、海外への直接支払い | 認めない |
| 政府への納付、配当・株主分配、政治団体・宗教団体への支払い | 認めない |
個人間の自由送金は原則認めず、給付資格・残高の包括的な譲渡、換金、相続、差押も認めない。一身専属とは、制度で列挙された買物や役務対価の支払いまで禁止する意味ではない。
対価額が確定した後に、LBC払いを分割、掛け、任意猶予、後日精算へ回さない。即時に全額決済できなければ、そのLBC取引を成立させない。検針・検収で支払額そのものを確定するための期間と、確定後の信用供与を区別する。
LBCの返金、未払報酬、清算、保証、立替等を通じて、円建て請求権を作らない。LBC利用によって手元に残った円が貯蓄や投資へ回る間接効果はあり得るが、それをLBCの直接利用とは区別する。
5. 個人と事業の二つの残高
個人区画の半減期は一律1年を基準とする。事業区画には一律の事業減価率 λ_c を置く。事業減価率の実施値・上下限は第0段の設計事項であり、特定の半減期を確定値として掲げない。業種別の減価率は、必要性を実証するための検討対象とする。
残高は時間に応じて指数的に減る。個人区画について365日換算の例を示すと、残高は「当初残高 × 2^(−経過日数/365)」で計算できる。
| 経過日数 | 当初10,000 LBCを使わず保有した場合 | 減少累計 |
|---|---|---|
| 1日 | 約9,981 LBC | 約19 LBC |
| 30日 | 約9,446 LBC | 約554 LBC |
| 180日 | 約7,105 LBC | 約2,895 LBC |
| 365日 | 5,000 LBC | 5,000 LBC |
| 730日 | 2,500 LBC | 7,500 LBC |
これは追加受領・支出・死亡のない場合の計算例である。365日基準と一暦年の扱い、端数処理は実装時に整合させる必要がある。返金や決済保留によって、過去の減価を消したり時計を止めたりしない。
減価の目的は、残高を保有し続けるより生活と実体事業で使う動機を作ることにある。ただし、減価率を変えるだけで取引先が増えたり、売り手の再支出先が確保されたりするわけではない。
6. 受領網と輸入に必要な円
一般事業者のLBC受領は任意とし、円価格とLBC価格の二重表示を認める。円への交換請求権や、すべての商品を常に同じ価格で買える保証は設けない。事業者がLBCを受け取るかは、国内仕入れ、賃金、役務対価等へ再支出できるかに左右される。
公益分野の額面受領義務と、輸入対応分を円建てで表示する原則を置く。ただし、政府受領禁止と公営公益をどう両立させるかは未確定である。自治体直営、公営企業、独立行政法人、政府出資会社を、どの主体・会計区画に置くかを法制化前に明確にする。政府部門を一括してLBC受領可能とは扱わない。
輸入には円または外貨が必要であり、LBCの直接発行から輸入代金は生まれない。生存に必要な支出の輸入含有分は、所得に応じた円交付金をLBCと別勘定で設計する。対象、所得単位、金額、財源、執行主体は今後確定する。輸入企業のLBCを国が円へ交換する仕組みは設けない。
重要なのは、売り手が受け取ったLBCを次の支払いへ回せる「再支出能力」である。受領が再支出能力を上回る定常モデルでは、減価率を下げても必要な減価総額が減るとは限らず、滞留残高が増える場合がある。仕入先の受領網、円で支払う輸入・債務、労働側への還流を一体で調べる。
店舗の参加とわかりやすい価格表示
端末導入支援、低廉な手数料とその上限、即時決済、公開仕様による加盟店接続を整え、小規模店舗も参加しやすくする。支払画面には円・LBCそれぞれの必要額、受領可能額、適用条件を決済前に表示する。公益分野の額面受領原則と、一般事業者の任意受領・二重価格を区別し、受領拒否率、価格差、再支出先の不足を公表する。
店舗がLBCで払える費用の範囲を把握し、輸入原価、既存の円債務、法定の円賃金までLBC受領で賄えると想定しない。業種別の保有日数、粗利益、再支出割合を測り、一律の事業減価率の下で負担が集中する事業者への対応を検証する。
7. 国内供給力と円側の産業政策
LBCの需要を実際の生活改善へつなげるため、次の施策を併せて提言する。政府の調達・投資・補助は円予算で行い、民間事業者の適格なLBC支出と区別する。
生活必需品と重要輸入の供給
食料生産、再生可能エネルギー・省エネルギー、住宅の整備・修繕、医療・介護、物流への投資を先行させる。設備だけでなく、働き手の育成、処遇、施設の稼働、地域ごとの供給不足まで対象とする。輸入設備・原料が必要な案件では、円・外貨の調達計画と供給が増えるまでの期間を明記する。
食料、エネルギー、医薬品、半導体等の重要輸入については、円側の「戦略輸入勘定」を設け、調達・備蓄・供給網分散の予算を見える形で管理することを提案する。これは実物の確保に使う円予算であり、事業者のLBC残高や受領額に応じて円を払い戻す精算窓口ではない。家計向けの所得に応じた円交付金とも会計を分ける。
外貨準備や対外資産を毎月のLBC給付の財源とは数えない。移行時の重要輸入への活用を検討する場合も、資産の保有目的、法的権限、流動性と円側の財政負担を別途審査する。
デジタル基盤と国内への再投資
- 国内デジタル基盤:国産クラウド、AI基盤、決済、広告・コンテンツ流通への長期投資と円による政府調達を進める。デジタル関連収支の赤字を政策開始から10年で半減させることを目標案とし、基準年、サービス品質、国内付加価値、輸出を併せて評価する。これは達成予測ではなく、毎年検証する産業政策上の目標である。
- 国内成長への投資:NISAの自由な商品選択を維持し、国内の設備、研究開発、スタートアップ、地域インフラへの円投資を対象とする別枠の非課税制度を提案する。対象の実体投資と税収への影響を検証し、単なる資産の付け替えを除外する。
- 海外利益の国内還流:海外子会社利益を国内の設備・賃金・研究開発へ実際に還流した場合に限る時限的税額控除を検討する。円側の税制措置として扱い、既存投資の付け替えや二重優遇を監査する。
- 技術と人材の承継:重要技術、生産設備、熟練人材の維持を支え、国内の事業承継・再投資・人材育成へ円による調達と支援を行う。
円側では、所得・金融所得・土地・独占的利益等への課税のあり方と金融システムの安定策を検討し、必要な公共支出と格差への対応を担う。これらの円政策の効果を、LBC発行だけの効果として計上しない。
8. 円税務との対称分離と労働者の保護
LBCは、給付だけでなく賞与、役務報酬、売上等も円換算して円課税標準へ入れない設計とする。同時に、LBCの支出・減価から円の損金、控除、仕入税額控除、還付、取得原価を生じさせない。収入側と支出側の双方を分離し、LBCによる納税、源泉徴収、公課納付も行わない。
この原則はLBCの導入法と関連法制で実現すべき内容であり、現行税制の下で既に認められた免税という意味ではない。円・LBC混合取引、共通費、関連当事者間取引、LBC取得資産の移転、社会保険や給付資格の判定には、別途境界規則が必要である。円側の税や国債を廃止する提言ではない。
既に発生した円賃金、契約済みの円支払義務、法定の円支払義務をLBCで履行したことにはできない。LBC賃金は本人が明示的に選ぶ将来報酬への併用分とする。役務対価の受領枠は「max(基礎額, 30% × 円建て労働収入)」という形を持つが、基礎額、対象期間、分母、複数支払元の集約等は未確定である。この30%を、一律の給与置換許可と解釈しない。
割増賃金、休業、平均賃金、退職・解雇等の円建て算定基礎へLBC報酬をどう接続するかは残る課題である。労働基準法第24条の賃金支払いの原則との整合を、制度導入の条件として検討する。厚生労働省「労働基準法第24条(賃金の支払)について」
9. 消滅、返金、事業終了の扱い
LBC総量からの経済的消滅は、時間減価と保有者消滅の二つに分ける。個人の死亡時は当該個人区画の残高を消滅させる。事業では、承継先がなく、休眠でもなく、通常の法的順位に従った清算配当を終えた真正な最終清算に限り、清算後残余を消滅させる。
合併・事業譲渡・承継では残高と履歴を保存して移転し、休眠中は通常減価を続ける。形式的な解散や口座IDの廃止だけでは残高を消滅させない。国籍喪失時は新規発行を止めるが、既存残高は保持し通常減価を続ける。
返金は「買物をしなければ、支払った本人に現在残っていた額」を基準とする。例えば個人が10,000 LBCで購入し30日後に返品する場合、返金額は丸め前で約9,446 LBCとなる。売り手から買い手へ同額を移し、新規発行や独立した差額消却は行わない。
売り手の残高が足りない場合、可分財は最小販売単位に沿って賄える範囲を部分返品とする。不可分財は要求した整数個の全量を賄えなければ、その要求を成立させない。原取引と実際の返品の確認を前提とし、不足額を円債権へ変えない。買い手の死亡・真正終了後は返金を成立させず、相続人へ付け替えない。
誤発行は、時間減価後の未使用相当額と現在残高の小さい方まで巻き戻す。既に使われた分を将来給付から相殺しない。LBC残高の差押は禁止し、不正取得に伴う独立した円建て損害賠償は司法判断と円資産への通常の執行で扱う。
10. 発行量と循環をどう管理するか
主要な管理対象は、個人区画からのLBC最終支出フロー C と、事業区画に滞留する残高 M_c である。発行量 b を主として最終支出へ、事業減価率 λ_c を主として滞留残高へ対応させる。取引回数を増やすこと自体を目的にしない。
個人残高を M_i、個人支出率を s とすると C = s × M_i となる。ただしCは国内付加価値そのものではない。LBC経由の国内付加価値は、年次に測る係数 κ_VA を用いた VA_LBC = κ_VA × C という派生量として扱う。生活必需品への到達、実質購買力、円負担は別の安全指標として監視する。
数学上、一律の正の減価率λと一定発行bだけを置く一区画モデルでは、dM/dt = b − λM、定常残高は M* = b/λ となる。この条件付き結果を、実際の個人・事業二区画の残高予測へそのまま使わない。二区画では支出・還流、減価、残高で加重した死亡・真正終了の率が必要になる。
Cの目標帯からの累積乖離を記録する監査勘定と、条件を満たす是正能力を反映する補償勘定の設計がある。ただし、是正が進まない時間に上限がなければ、暦日での解消期限は保証できない。事業残高には同じ累積補償勘定を置かず、水準、逸脱期間、収束予測を監視する。
公開ルールで調整し、発行・移転・区画別残高・減価・保有者消滅を照合できるようにする。有界な通貨量や条件付きの定常解は、物価安定、十分な供給、実際の制御可能性を証明しない。
年間発行額と残高を分けて読む
給付対象人数をN、月額をgとすれば、人数と月額が一年間一定の場合の年間発行額は12 × N × gである。対象を仮に1.2億人と置いた規模感は次のようになる。実際の対象者数や採用する月額を示す表ではなく、各行も導入日程を表さない。
| 仮の月額 | 年間発行額 |
|---|---|
| 1万LBC | 14.4兆LBC |
| 3万LBC | 43.2兆LBC |
| 5万LBC | 72兆LBC |
| 10万LBC | 144兆LBC |
年間発行額はフローであり、その全額が同時に残る残高ではない。また144兆LBCの発行が144兆円の実物資源を増やすという意味でもない。月次発行と時間減価だけの単純計算を、事業への移転、還流、死亡・真正終了を含む全国運用の予測や残高の下限にしない。区画別の残高と移転を含む複数シナリオを公表する。
11. 実測を先行させる段階導入
満額を初年度から投入せず、第0段で制度の利用可能性と運用条件を測り、低額から始める。給付額、開始日、増額日程は、受領網・供給能力・購買力の実測に基づいて定める。
| 段階 | 実施すべきこと | 次段へ進むための確認 |
|---|---|---|
| 第0段:測定・法制設計 | 受領網、再支出経路、円負担、生活への到達、残高分布を把握する | 税務・労働・公営公益の境界、目標帯、操作範囲、判断主体を明確にする |
| 低額での開始 | 給付、国内決済、返金、本人確認、監査を限定した規模で運用する | 実際の物価・受領・購買力と、将来残高の推計を照合する |
| 条件付きの拡張 | 観測結果で係数を再推定し、公開ルールに沿って規模を見直す | 次段でも供給・再支出・円負担の制約に対応できるか検証する |
過熱時の対応は、増額停止、減価の強化、給付減額であり、新規発行の完全停止は最終手段とする。個人半減期1年・一律事業減価率の基準に整合させ、発動閾値、変更幅、上下限、解除・再開条件を運用前に具体化する。
LBC導入による円消費の置換、純追加需要、労働供給、受領先の変化は、台帳の利用率だけでは判定できない。比較対象を設けた調査と構造推定を行い、各段階で再検証する。給付を止めても既存残高からの需要は残るため、開始後の短期観測だけで増額を正当化しない。
各段階で行う準備
準備段階で内閣に関係省庁の調整本部を設け、生活基盤通貨法と税務・労働・社会保障等の関連法制、円で必要な実施予算を整える。給付対象、二重発行防止、ウォレット、店舗接続、返金、承継、監査の仕様を公開し、複数地域・業種と多様な利用者で検証する。地域実証で給付を行う場合は、本制度の全国同月同額という原則と区別し、目的・対象・期間を定めた実証法制で扱う。
低額で開始する前に、本人確認、カード、相談窓口、決済網との接続試験、障害復旧訓練を完了する。供給増強事業は工期・人材育成の遅れを見込み、給付の拡張に先行させる。実証で重大な問題が見つかった場合は、解決を次段への条件とする。
縮小・終了手順も開始前に定める。新規発行を縮小しても既存残高を突然失効させず、通常減価と適格な支払い・返金を継続する移行期間、受領先と相談窓口の維持を設計する。政府による円への償還や納税利用を出口にせず、残高を持つ人・事業者への影響を公開して立法上の手続きを踏む。
12. 統治・監査・権利保障
権限と責任を分ける
| 主体 | 提案する責任 |
|---|---|
| 国会 | 給付資格、発行の上限・手続き、個人半減期1年、事業減価率の変更範囲、利用範囲、監査・救済を法律で定める |
| 政府・発行実施機関 | 法定範囲で個人へ直接発行し、資格確認、制度執行、円予算に責任を持つ |
| 独立政策委員会 | 経済・福祉・供給網・決済・安全性・プライバシーの専門家と利用者・事業者・自治体の参加により、発行量と事業減価率を公開勧告する |
| 日本銀行 | 円側の金融政策と決済の安定に関する知見を提供し、制度間の影響を検証する。LBCの発行主体とは分ける |
| 公的ウォレット運営機関 | デジタル庁等と連携し、アプリ、カード、本人確認、復旧、店舗接続を提供する。利用者のLBCを自己保有しない |
| 会計検査院・独立監督・第三者監査 | 法制で所管を明確にし、発行・残高・減価・消滅、円の委託費、障害、不正、個人情報の取扱いを監査する |
政府が個人残高を任意に書き換えたり、技術受託企業が独自に発行したりできない権限管理を置く。日銀へ無制限発行を命じず、円の金融政策の独立性を保つ。各機関の役割は法改正の必要性を確認して定める。
発行・区画間移転・区画別残高・時間減価・保有者消滅、物価、受領率、供給不足、障害、不正、円の運営費を月次公開する。公開台帳とは集計と検証可能性を指し、個人の購入履歴を一般公開することではない。仕様、調達契約、脅威モデル、監査結果は原則公開し、認証情報等の保護が必要な部分は独立監査で検証する。
調整は法律と公開データに従う。事業減価率を変える場合は、理由、効力発生日、区画別残高と運転資金への影響を事前に示し、国会の監督に服する。特定の個人・企業を優遇・制裁する係数変更や、過去の減価計算の書換えを認めない。
プライバシー、不正対策と救済
全取引に改ざんを検知できる監査証跡を残し、本人確認データと取引データを分離する。通常の不正検知は必要な範囲の仮名IDと取引類型で行い、政府職員による購入履歴の自由検索を禁止する。実名との結合、閲覧目的、保存期間、承認手続き、閲覧ログの監査を法定する。
用途制限には加盟店属性と取引類型を基本として使い、換金性商品の取扱いなど追加確認が必要な場合も収集範囲を限定する。思想、疾病、性的指向等を推知して個人を選別する仕組みを設けない。政治団体・宗教団体への支払いを制度上認めないことと、本人の政治的立場や信仰を理由に生活利用を止めることを区別する。
架空売買、自己売買、関連当事者間の循環、名義貸し、実体のない事業区画への移転は、売上・請求・納品記録等と照合する。個別の調査と取引制限には法定要件、適切な承認・司法手続き、期限、理由開示を設ける。監査上の疑いだけで残高を没収・消滅させず、将来給付からも回収しない。
支払拒否や認証停止には、人による再審査、迅速な異議申立てと誤停止の仮解除を用意する。技術上の停止は必要な範囲・時間に限り、既存残高と履歴を保存する。復旧は正しい台帳状態への回復として行い、任意の再発行、減価時計のリセット、円債権への転化で代替しない。
13. 決済アクセスと災害対応
銀行口座とスマートフォンの有無を受給・保有・決済の条件にしない。無償ICカード、専用端末、対面・電話支援を用意し、郵便局・自治体窓口等で本人確認、端末交付、紛失時の認証回復を支援する。高齢、障害、日本語能力、居住地による使いにくさを検証し、代理権を限定した支援制度とアクセシブルな画面・説明を整える。
ウォレットには、個人・事業それぞれの残高、適用半減期・減価率、当日の減価額、追加取引がない場合の30日後の予測残高を分別表示する。LBCで支払える仕入先・サービス、円で必要な支払い、返金時の計算を利用前に確認できるようにする。端末を失っても台帳上の残高は失われず、本人確認と旧認証の失効を経てアクセスを回復する。
公的ウォレットのアプリ、カード、本人確認、加盟店APIは公開仕様とし、民間企業の技術開発を活用する。委託企業の倒産・撤退に備えて運営を移管できるようにし、銀行や決済事業者がLBCを預かる構造にはしない。
停電・通信断には、複数拠点、予備電源、複数の通信経路、移動端末、鍵の分散管理と復旧訓練を備える。即時全額決済を確定できない場合は、LBCを後払い債務として成立させず、円や現物による別の緊急支援で生活を支える。通信復旧後の照合を前提にしたオフライン払いは、即時決済・二重使用防止・減価の整合を満たせるかを調べる研究課題とし、実装済みの機能として約束しない。
運営上の被害救済には、端末再交付や相談・復旧費用に備える円予算を置き、委託先の責任と独立した損害の審査手続きを定める。LBC残高を円で買い取る補償や、残高不足の自動的な円立替は設けない。
14. 主なリスクと対応
| リスク | 政策対応と確認事項 |
|---|---|
| 需要が国内供給を上回る | 物価・欠品・納期を監視し、増額停止等の段階的な調整と供給力への先行投資を組み合わせる |
| 円安・輸入物価で生活費が増える | 輸入に必要な円を別に確保し、家計向け円交付金と重要輸入の調達を整備する |
| デジタルサービス等の対外支払いが増える | 国内基盤・輸出・再投資を支援し、LBCの循環と円側の対外収支を分けて評価する |
| LBC利用で手元に残った円が資産市場へ向かう | 預金移動、不動産・金融市場への影響を測り、円側の税制と金融安定策で対応する |
| 事業者の残高が減価し、運転資金が不足する | 再支出先、保有日数、円費用を把握し、一律の事業減価率と給付規模を検証する |
| 店舗が受け取らず、生活に使えない | 仕入れ・報酬への利用網、店舗接続・端末支援を整え、受領率を拡張判断の条件にする |
| 闇換金・転売・架空取引が生じる | 実体取引との照合、関連取引の検知、法定手続きによる調査を行う。完全防止とは言わない |
| 監視や恣意的な利用制限に使われる | データ分離、目的制限、独立監督、理由開示、人による救済を制度化する |
| サイバー攻撃・災害・委託先の障害で使えない | 冗長化、認証・鍵管理、独立検証、復旧訓練と別系統の緊急生活支援を用意する |
| 政治判断で過剰発行する | 法定の操作範囲、独立勧告、国会の監督、月次公開と条件付き拡張を組み合わせる |
| 二重価格や混合決済が複雑になる | 円・LBCの必要額と条件を事前表示し、価格差と苦情を調べ、税務の境界規則を整える |
15. 国際的な位置づけとエビデンス
BISの2024年調査では、回答した93中央銀行の91%がリテールまたはホールセールCBDCを検討していた。これはCBDCへの関心の広がりを示す調査であり、半減期付き第二通貨への支持率ではない。BIS「2024年CBDC・暗号資産調査」
| 公式資料で確認できる検討 | LBCへの示唆と違い |
|---|---|
| BISは中央銀行が中核、民間銀行・決済事業者が利用者サービスを担う二層構造を論じている | 官民の役割分担は参考になるが、LBCでは政府が個人へ直接発行し、金融機関の受領・保有を認めない |
| ECBのデジタルユーロ案は現金を補完し、保有限度額と無利息を想定する | 同じユーロの形態を追加する設計と、円とは別に減価するLBCを区別する |
| ECBは用途をあらかじめ限定する通貨にはせず、条件付き支払いとの違いを示している | LBC固有の用途制限が受領・価格・権利へ与える影響は独自に検証する |
| HKMAのe-HKD第2段実証は技術に加え、商業的な有用性、拡張可能性、既存基盤との接続を評価している | 決済が技術的に動くことと、利用者・店舗が継続利用することを分けて確認する |
参照:BIS「CBDCs: an opportunity for the monetary system」、ECB「FAQs on the digital euro」、HKMA「e-HKD Pilot Programme Phase 2 Report」
暗号技術、相互運用性、利用者保護、オフライン決済の研究は活用できる。一方、これらの公式資料は、LBCの半減期・税務分離・受領網を組み合わせた全国制度の成功を実証したものではない。
通常通貨の現金給付実験についても、給付額・対象・期間・既存福祉との接続が異なる。労働供給、健康、心理的安定への結果を半減期通貨へ直接移さず、仮説づくりと測定方法の参考にする。LBCでは使途制限、減価、事業者の再支出、価格への波及を追加して評価する。
前例の不足を理由に検討を止めず、次段へ進む条件と、停止・見直しが必要な条件を事前に公表する。比較対象を設けた評価、独立研究者による検証、個人情報を保護した集計データの公開を進める。実証結果を待たず成功を前提に全国拡張する工程は置かない。
16. 法制化・実装前に解く課題
実装に向けて、次の事項を優先して確定する。
- 公営公益の扱い:公益の受領義務と政府受領禁止を両立させる主体・会計区画。
- 円税務・社会保障との接続:混合決済、共通費、関連取引、資産移転、所得判定等の具体的規則。
- 労働側への還流:役務対価の枠の細目と、円賃金・法定給付の算定基礎の保護。
- 輸入対応の円交付金:輸入比率、対象、給付額、円財源、執行主体。
- 返金と訂正:端数処理、競合順序、複数期間にまたがる取引、返金済み取引の訂正。
- 二つの未解決接続:返金を最終支出Cのどの期間に計上するか、実行済み返金を取り消すときの正確な処理。
- 運用基盤:承継・休眠の処理、本人・原取引の確認、実物の返品や清算の証明、独立環境での再現検証。
台帳処理、返金、残高・フローの計算について形式検証と参照実装の検査を進める。補償勘定の形式化や実装、独立環境での再現検証も必要である。これらの検証と、全国運用の安全性、経済効果、法的妥当性の確認は区別する。
公共デジタル決済の技術検討には、日本銀行が公開する中央銀行デジタル通貨関連資料を参照する。LBCは政府発行の第二通貨という本提言独自の設計であり、日銀のCBDC検討がLBCを採用・承認したことを意味しない。日本銀行「中央銀行デジタル通貨」
17. よくある疑問
Q1. LBCは円なのか、地域通貨や商品券なのか
通常円とは別に法律で設ける、国内の生活と実体事業に用途を限る公的デジタル通貨である。国が個人へ毎月発行し、受け取った店舗も適格な支払いへ回せる設計である。円のデジタル版や、納税に使える商品券ではない。円への交換請求権も付けない。
Q2. 円へ交換できないのに、価値をどう支えるのか
生活に必要な財・サービスを買える受領網と、売り手の再支出経路が価値を支える。公益分野には額面受領原則を置くが、公営主体の扱いは法制上の課題である。一般事業者には二重価格を認め、常に1 LBCで1円と同じ物が買えるとは保証しない。価格差、受領拒否、実質購買力を測る。
Q3. 月額10万LBCなら年間144兆LBCになるが、大きすぎないか
対象を仮に1.2億人とした場合の年間発行額が144兆LBCであり、採用済みの給付額ではない。年間発行額と、その時点で残る残高を分ける必要がある。規模の妥当性は通貨量だけでなく、供給、物価、再支出、円負担を実測して判断し、低額から始める。
Q4. ハイパーインフレを起こさない保証はあるか
保証はない。供給能力を超える需要や、手元に残った円の追加支出も調べる。過熱時には増額停止、事業減価率の調整、給付減額を段階的に行い、発行の完全停止は最終手段とする。個人半減期1年を維持した上で、具体的な閾値・操作範囲と供給増強を先に定める。
Q5. なぜ円の給付ではなく、第二通貨を作るのか
国内の生活保障に用途を絞った直接発行と、時間減価による循環の促進を組み合わせるためである。円給付には使途の自由と既存決済網を使える利点がある。LBCには受領網と新しい基盤が必要になるため、円給付より優れると初めから決めず、生活への到達と運営費を比較して評価する。
Q6. なぜ半減期は1年なのか。事業者も同じなのか
個人半減期1年を制度設計の基準とし、日常利用を促しつつ数か月先の生活支出を計画できるようにする。ただし最適性が実証されたという意味ではない。事業区画には全国一律の事業減価率を置き、実施値と上下限を第0段で定める。特定の事業半減期を確定値として約束しない。
Q7. 減価は政府による財産の没収ではないか
受領時から条件を明示したLBCが時間とともに減る制度であり、減った分が政府収入になるわけではない。既存の円預金・現金をLBCへ強制転換せず、個別の制裁として残高を消滅させない。給付以外の適格な対価として受け取る人にも、減価条件と保護の範囲を明示する。
Q8. 店舗はなぜ受け取るのか。受領を強制するのか
一般事業者は任意で受領する。顧客需要と、国内仕入れ・適格な報酬等へ再支出できることが動機になる。公益分野の額面受領原則は別に扱う。納税や政府への売却を受け皿にせず、端末支援、手数料、即時決済、取引先の参加を整える。
Q9. 店が運転資金として持つ間に減ってしまわないか
減価するため、受領から仕入れ等への支払いまでの期間が重要である。事業区画の減価率を実測で定め、円でしか払えない費用、保有日数、粗利益、再支出割合を調べる。事業区画に移せば負担が消えるとは説明せず、真正な取引を確認して架空売上や名義貸しを防ぐ。
Q10. 輸入品を扱う企業は円・外貨不足にならないか
輸入原価をLBCでは払えないため、その危険を受領条件と価格に織り込む。家計の必需支出の輸入含有分には所得に応じた円交付金を別途設計し、重要輸入の調達も円予算で支える。企業のLBC残高を国が買い取る換金・精算制度は設けない。
Q11. 給料まで減る通貨で払われるのか
既存・契約済み・法定の円賃金義務はLBCで履行できない。将来報酬への併用も本人の明示的選択と法制整備を前提とし、円賃金の引下げや最低賃金・社会保険の潜脱に使わせない。役務対価の30%という式は、一律の給与置換許可ではない。
Q12. 税として受け取ったLBCや減価分を政府が再び使えるのか
政府はLBCを受領・保有・通常支出せず、納税にも使わない。減価分は政府の収入にせず、発行とは分けて記録する。政府からのLBCは資格を持つ個人への直接発行に限定し、公共調達や公務員給与の支払いには使わない。
Q13. 消費税を廃止する案なのか。円の財政はどうするのか
円側の消費税廃止をLBC導入の日程に組み込む案ではない。LBCの収入を円課税標準へ入れず、支出・減価からも円の控除等を生じさせない対称分離を法制化する。輸入、既存債務、社会保障、運営費に必要な円財源は円の歳入・歳出として確保する。
Q14. 既発国債や円預金はどうなるのか
既発国債は契約どおり円で元利払いし、円預金のLBCへの強制転換、債務削減、預金封鎖を行わない。ただし円の市場価値や物価を固定する保証ではない。LBC導入だけで円建て国債が不要になるという目標も置かない。
Q15. 日本銀行の独立性を壊さないか
LBCは政府が個人へ直接発行する制度とし、日銀に無制限発行を命じない。国会が法定範囲を定め、独立政策委員会が勧告し、政府が執行する。日銀とは円側の金融政策・決済への影響を検証する役割で連携し、権限と責任を分ける。
Q16. 市中銀行を通す必要はあるのか
銀行口座は受給・保有・決済の条件にしない。国から個人の専用ウォレットへ直接記帳し、金融機関がLBCを預金として受け入れ、貸し出し、自己保有する経路は設けない。認証や端末などの技術サービスへの関与と、残高の保有を区別する。
Q17. 闇換金、架空売買、転売を防げるのか
完全防止は約束できない。取引の監査証跡と実際の売上・納品を照合し、循環取引や名義貸しを検知する。個別調査には法定手続きを設け、疑いだけで残高を没収しない。不正に伴う独立した円建て損害賠償は司法と円資産への通常の執行で扱う。
Q18. 政府の監視や恣意的な利用停止に使われないか
その危険に対し、本人確認と取引データの分離、目的外閲覧の禁止、独立監督、閲覧ログの監査を法定する。個人の思想・信仰等を理由に生活利用を制限しない。誤停止には理由開示、人による再審査、迅速な仮解除を用意し、残高の没収で対処しない。
Q19. スマートフォンがない人や災害時はどうするのか
無償ICカード、対面・電話支援、代理権を限定した支援を用意する。災害には予備電源・通信経路と、円・現物の緊急支援を備える。即時決済を確定できない通信断の間にLBC後払いを成立させず、オフライン機能は制度規則との整合を検証する研究課題とする。
Q20. 海外で成功した前例はあるのか
引用した海外公式資料は、LBCと同じ半減期・用途制限・直接発行を組み合わせた全国制度の成功例ではない。CBDCの技術・運営研究を活用しながら、LBC固有の物価、受領、再支出、権利保障は独立に検証する。
Q21. いつ始めるのか。失敗したらどうするのか
開始日や確定月額はまだ置かない。第0段の法制・測定と基盤検証、低額開始、条件付き拡張の順に進める。重大な問題では拡張を見直し、縮小時も既存残高を突然失効させない。通常減価と適格な利用・返金を続ける移行手順を法定し、円への償還を約束しない。
Q22. 財源はどこにあるのか
LBC給付の名目的財源は国の直接発行であり、事前にLBC税収や円を集めてから配る構造ではない。ただし、輸入、システム運営、既存社会保障等に必要な円や、国内の実物供給は別に確保する必要がある。減価分を政府の歳入として再利用する仕組みではない。
Q23. 事業者の減価を遅くすれば解決するのか
一時的な保有負担と長期的な再支出不足は別の問題である。受領が再支出能力を上回る定常条件では、減価率の引下げが滞留残高を増やし、減価総額は変わらない場合がある。受領網と支払先の整備が必要である。
Q24. 数学で成功が証明されたのか
数学が示すのは、前提を明示した残高やフローの関係、限定された台帳処理の性質である。物価、供給、事業者の受領、生活への到達は実測と政策判断の対象である。有界な残高や条件付きの定常解を、経済的な成功の証明としない。
Q25. 返品の返金額や、亡くなった人の残高はどうなるのか
返金は、買物をしなければ支払った本人に現在残っていた額を基準とする。10,000 LBCの支払いから30日後なら約9,446 LBCを売り手から戻し、新規発行や独立した差額消却は行わない。残高不足時の返品には制限があり、不足を円債権にしない。死亡した人の残高は消滅し、相続や相続人への返金は行わない。
18. 政府に求める決定
- 生活基盤通貨法と関連法制の立案に着手し、個人への直接発行、個人半減期1年、円税務との対称分離、政府・金融への受領禁止を制度の中心に置く。
- 関係省庁の調整本部、発行実施機関、公的ウォレット運営機関を整え、第0段の測定・法制設計・実証に必要な円予算を確保する。
- 公営公益、円交付金、労働者保護、税務・社会保障の境界、返金・訂正・承継を具体化し、残る論点と担当主体を公開する。
- 食料、エネルギー、住宅、医療・介護、物流、デジタル基盤への円による供給力投資と、重要輸入の確保を先行させる。
- 既存社会保障と円契約を守り、LBCへの強制転換を禁止する。銀行口座・スマートフォンを要しないアクセスと権利救済を整える。
- 独立した政策勧告と監査、国会の監督、月次集計の公開を制度化し、技術検証と経済効果の評価をそれぞれ行う。
- 給付の規模・拡張・縮小を実測と公開ルールで判断し、受領網、供給、実質購買力、円負担の条件が整った段階から実施する。
19. 参考文献・公式資料
以下は、法制度、経済状況、公共デジタル決済の検討に用いる公的機関の公表資料である。研究会報告の分析は執筆者の見解であり、政府の決定と区別する。これらの参照は、各機関による本提言の承認を意味しない。リンク確認日:2026年9月10日。
- 衆議院「日本国憲法」 — 第25条。生存権の法的背景。
- 厚生労働省「労働基準法第24条(賃金の支払)について」 — 賃金支払いの原則と、LBC報酬を検討する際の法制上の確認事項。
- 日本銀行「中央銀行デジタル通貨」 — 公共デジタル決済に関する公表資料への入口。
- 財務省「財政に関する資料」 — 2026年度の予算・普通国債残高見込みと利払費の背景。
- 経済産業省「デジタル経済レポート」 — デジタル関連収支と国内産業基盤の論点。
- 財務省「令和6年中 国際収支状況(速報)の概要」 — 2024年の第一次所得収支。速報時点の値として参照。
- 財務総合政策研究所・研究会報告「第一次所得収支は還流しているのか?」 — 清水順子・佐藤清隆による資金還流と再投資の分析。
- BIS「Advancing in tandem: results of the 2024 BIS survey on central bank digital currencies and crypto」 — 2024年の93中央銀行を対象とするCBDC調査。
- BIS「CBDCs: an opportunity for the monetary system」 — 中央銀行と民間の役割分担。
- ECB「FAQs on the digital euro」 — 現金との補完、保有限度額、無利息、条件付き支払いと通貨の用途制限の違い。
- HKMA「e-HKD Pilot Programme Phase 2 Report」 — 技術的な利用可能性、商業的な有用性、拡張・基盤接続の評価。
- 財務省「令和8年度一般会計歳出・歳入の構成」 — 一般会計予算の歳出、税収、公債金、国債費。
- 財務省「債務管理リポート2026」 — 国債発行計画、借換債を含む発行総額。
