研究の背景
貧しい若者が収益性のある事業を始められない原因が資金制約なら、一度の大口助成で長期的な所得経路を変えられる。Youth Opportunities Programでは4年後に所得が38%高かった。本稿は9年後に再訪し、その差が持続したかを検証した。
方法と対象
2008年、職業訓練・事業計画を共同申請した535若者グループ、約1.2万人を無作為化した。265群5,460人には1人平均約382ドル、グループ平均7,497ドルを一括送金し、270群5,828人を待機対照とした。資金使途の事後監視はなかったが、申請・集団形成を要するため純粋な無条件給付ではない。
| 時点 | 主な状況 |
|---|---|
| 基準時 | 平均25歳、男性67%、週労働約11時間、現金所得約1日1ドル |
| 2年 | 投資、熟練職、所得が増加 |
| 4年 | 所得38%、消費11%増加 |
| 9年 | パネル2,675人を追跡、実効追跡率87% |
標本は貧しいが、グループを作り申請できた意欲的な若者である。9年分析は共変量と追跡重みを用い、脱落への感度分析も行った。
結果
9年後に所得・雇用・消費は収束した
対照群も事業と日雇いを増やし、両群とも週約45時間働くようになった。9年時の所得指数差は0.066標準偏差、月所得差4,172ウガンダ・シリング、消費差2,726シリング、労働時間差0.513時間で、いずれも有意でなかった。
共変量を外すと所得指数差は0.111標準偏差で有意になるが、事前に不均衡だった貯蓄、資産、借入、熟練経験と追跡を調整した主仕様ではnullだった。脱落者へ不利・有利な値を置く感度分析でも所得効果は0.009〜0.112標準偏差と幅がある。
早く稼いだが、長期の所得水準は変わらなかった
9年間の累積所得増を粗く積算すると約665ドル、助成額の1.8倍だった。ただし年次間を補間した不精確な試算で、実施費用を含まない。助成は収益を恒久的に引き上げたというより、対照群が後に行う投資を数年早めた「キックスタート」と解釈される。
資産と熟練職への効果は残った
耐久資産指数は0.116標準偏差高く、熟練職への従事も多かった。身体・精神健康、死亡、出生、本人と子の教育は概して有意差がなかった。子どもの健康指数に0.08標準偏差、女性回答者で0.17標準偏差の改善があるが、前者は10%水準で、多重検定補正済みの確証ではない。
日本に当てはめるときの注意
最大の障害は、事業計画を提出したウガンダの若者への一度限りの起業資金であり、生活費として毎月支給する日本のUBIとは介入も対象も違うことである。
- 申請者は一般の貧困層より意欲・組織力が高く、全国民への外挿はできない
- 効果消失は「無意味」ではなく、早期の所得増と資産蓄積があった
- 日本では資本市場、職業訓練、倒産制度、雇用機会が大きく異なる
- 9年間の間に対照群も成長したため、マクロ不況下では収束速度が違い得る
- 自己申告所得、基準時不均衡、脱落への感度が残る
- Vanguard Charitable Trust、世界銀行、ウガンダ政府が各調査期を支援し、Martinezは初期に世界銀行職員として参加した
