UBI研究機構 資料データベース / 制度設計・財源 PAPER 34
制度設計・財源 / 米国(ペンシルベニア州) / RCT / 2019

給付の受給開始とターゲティング — SNAP申請支援実験

原題:Take-Up and Targeting: Experimental Evidence from SNAP

種別
論文・研究資料
発表年
2019
地域
米国(ペンシルベニア州)
手法
RCT
出典
Quarterly Journal of Economics, 134(3), pp.1505–1556(2019年)
この論文の要点
01

情報だけでもSNAP受給率は5ポイント上がった

02

申請支援を加えると12ポイント上がった

03

新規受給者は平均給付額と健康上の必要度が低かった

研究の背景

給付資格があっても、情報不足、書類、時間、心理的負担のため申請しない人が多い。案内や申請支援で受給率を上げられても、最も必要な人に届くとは限らない。本研究は、受給開始の増加とターゲティングの質を同時に評価した。

方法と対象

2015年末、ペンシルベニア州の60歳以上でMedicaid加入中、SNAP未加入だが受給資格の可能性が高い約3万人を三群へ無作為化した。

群人数処置
対照10,630通常制度
情報のみ5,314資格可能性と申請電話番号の郵便、督促葉書
情報+支援10,629上記に加え電話で申請作成・書類収集・提出・追跡支援

州の行政記録で申請、受給、給付額を23か月追跡した。主な比較は9か月時点である。支援はBenefits Data Trustが実施し、研究は事前登録された。

結果

受給率は情報で倍近く、支援で3倍になった

9か月の受給率は対照群6%、情報のみ11%で差は5ポイント、情報+支援18%で差は12ポイントだった。いずれもp<0.001である。効果の約90%は23か月時点でも残った。

両介入群の電話利用率は約29%だったが、電話した人の申請率は情報のみ約30%、支援群約60%、受給率は23%対45%だった。督促葉書を省いた無作為比較では、電話が7ポイント、申請が3ポイント、受給が2ポイント低かった。

支援は承認率でなく申請率を上げた

申請却下率は各群約22%で、介入による有意差はなかった。したがって、支援は審査を通しやすくしたのではなく、申請まで進む人を増やした。変動費は情報のみ約1ドル、支援約7ドルで、追加受給者1人当たり費用は約20ドルと60ドルだった。

増えた受給者は平均的に給付額が低かった

受給者の月額給付は対照群146ドル、情報群115ドル、支援群101ドルだった。介入で増えた受給者は比較的健康で、白人・英語話者が多く、推定される必要度も低かった。情報や手続き支援は全員の摩擦を下げるが、必要度の高い人ほど申請障壁が大きい場合、ターゲティングを悪化させ得る。

著者の厚生モデルでは限界公的資金価値は情報0.85、支援0.87と推定されたが、誤認、申請私費用、行政費用をどう置くかに強く依存する。

日本に当てはめるときの注意

最大の障害は、高齢者向けSNAPの申請支援であり、申請不要の普遍給付そのものの効果を調べていないことである。

  • 日本の生活保護や各種給付は資格判定、世帯単位、資産要件が異なる
  • 自動給付化すれば本実験の申請摩擦は小さくなるが、誤給付や行政データ連携の問題が残る
  • 受給率だけをKPIにすると、必要度の高い未申請者を取り残す可能性がある
  • 対象はMedicaid加入済みの高齢者で、若年・就労世帯には外挿できない
  • Alfred P. Sloan Foundationが資金提供し、Benefits Data Trustが実施協力した。公開PDFは2018年NBER版、書誌は2019年査読版である