UBI研究機構 資料データベース / 途上国の給付 PAPER 39
途上国の給付 / ルワンダ(Kayonza・Nyabihu地区) / 多群クラスターRCT・費用等価比較 / 2024

現金か複合的な栄養支援か — ルワンダで費用をそろえた比較

原題:Cash versus Kind: Benchmarking a Child Nutrition Program against Unconditional Cash Transfers in Rwanda

種別
論文・研究資料
発表年
2024
地域
ルワンダ(Kayonza・Nyabihu地区)
手法
多群クラスターRCT・費用等価比較
出典
Economic Journal, 134(664), pp.3360–3389(2024年)
この論文の要点
01

約124ドル相当では両方式とも子の成長を変えなかった

02

同費用の現金は消費・債務返済・資産をより増やした

03

約517ドルの現金で食事と子の成長が小幅改善した

研究の背景

栄養教育、衛生、農業、貯蓄組合を束ねた支援と現金給付は、費用も成果の種類も違い比較が難しい。本研究は現金額を複数無作為化し、事後に確定した実施費用と同じ点へ補間することで、複合支援Gikuriroと無条件現金を比較した。

方法と対象

政府の貧困区分に入り、妊婦・授乳婦または5歳未満児がいる世帯を対象とした。248村をブロック無作為化し、基準時から13か月後に追跡した。

群村数1適格世帯当たり実効費用
Gikuriro74124.49ドル
小口現金3群各2254、96、121ドル
大口現金34517ドル
対照740

Gikuriroは栄養・衛生教育、野菜栽培、家畜、貯蓄貸付組合などで、適格世帯の80%が何らかに参加した。現金の受給率は81〜91%で、現金には子どもの栄養を促す案内が付いた。公開稿では大口群の平均移転額を517ドル、実際の1受給世帯当たりドナー費用を567ドルとし、未受給を含むITT用の1適格世帯当たり実効費用を517ドルとしている。主要成果は消費、食事多様性、貧血、子の身長・体重・上腕囲、土地以外の純資産である。世帯脱落は対照で約3.3%と低かったが、子の身体測定は処置群で脱落が少なかったため重み付けとLee境界を確認した。

結果

約124ドルでは子どもの中核成果は動かなかった

Gikuriroは消費、食事多様性、資産、子の身体指標、貧血を有意に変えなかった。身長年齢比と体重年齢比の95%信頼区間はそれぞれ約-0.03〜0.13、-0.04〜0.12だった。Gikuriroは貯蓄を109%増やしたが、衛生実践や健康知識への明確な効果はなかった。

平均費用90.28ドルの小口現金も主要成果を変えなかったが、債務を77%減らし、生産資産を26%、消費資産を35%増やした。事後費用124ドルへ補間すると、Gikuriroの消費は同費用現金より約19%低かった。同費用現金は債務73%減、生産資産30%増、消費資産40%増と推定された一方、Gikuriroは貯蓄で優位だった。

大口現金は幅広い家計成果を改善した

517ドルの大口現金は食事群数を0.55、対照平均4.77から12%増やした。生産資産は80%増、消費資産はほぼ倍増した。子の身長年齢比0.09標準偏差、体重年齢比0.07、上腕囲0.13改善し、発育阻害は6ポイント、消耗症は5ポイント減ったが、多くは10%水準または多重検定補正前の結果である。

子どもの死亡は約1ポイント、70%減と推定されたが、未加重件数は対照13/2,596、大口現金2/1,200と少なく、多重検定補正後の確証ではない。論文自身も小標本の死亡結果として慎重に扱う。

金額と期間が比較を左右した

現金費用が100ドル増えるごとに消費約5%、食事多様性9%、身長年齢比0.022標準偏差が増える線形推定だった。ただし小口3群が近接し、大口が一つだけなので非線形性の検出力は低い。Gikuriroの実施は追跡時点で8〜9か月にすぎず、地域能力への長期効果を捉えていない。

日本に当てはめるときの注意

最大の障害は、ルワンダの貧困母子向け栄養プログラムと一時金の比較で、現金一般の優位や日本の社会サービス代替を示す研究ではないことである。

  • 約124ドルでは両方式の子ども成果がnullであり、「現金が栄養を改善した」という結論ではない
  • 大口群と同費用の高強度Gikuriro群がなく、金額の違いと方式の違いを混同してはならない
  • 13か月、特にGikuriro実施8〜9か月は身体発育や公共能力の評価には短い
  • 現金には栄養案内が付き、地方行政の強い関与も使途選択へ影響した可能性がある
  • USAID、DIV、Google.orgが資金提供し、CRS、GiveDirectly、IPAなどが協力した。公開PDFは2023年改訂稿、書誌は2024年査読版である